何も拭くものはない

まさや

2018年01月17日 16:46

祖父、大濱信光(シンコウ)の、この詩はほんとに美しい詩だなあ、、、と思う。





『何も拭くものは無い』


白い布切れに覆われた
死んだ子の顔

氷原の底に
よこたわる沈黙

産声をあげない
新しい門出

私はふるえる手で
成長のとまった爪を切った

無人島の砂深く埋もれていた
貝殻よりも美しい爪を切った

妻よ なぜおまえは
ハンカチをポケットに入れてやるのだ

何も拭くものは無い

食塩のように清潔だった
短い生涯ではなかったか
  






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